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The Muppets Mayhem/ザ・マペッツ・メイヘム シーズン1 第5〜6話 解説&補足

記事で扱っているエピソードまで視聴していることを前提として書かれています。※それ以降のネタバレは含みません。
過去に公開された作品(映画含む)の内容に触れている場合があります。

シーズン1 第5話 Track 5: Break on Through/トラック5:ブレイク・オン・スルー

タイトル

The Doors(ドアーズ)の曲”Break on Through (to the Other Side)” (1967年)より。

ネタ解説&補足

ヘッドバンギング
アバンタイトル、車は前回と同じくハリウッド・ブールバードをチャイニーズシアター方面に向かって走っていきます。毎度この辺りをウロウロしている様子。皆がヘッドバンギングせずにいられない曲は、Metallica(メタリカ)の”Master of Puppets”です。首を痛めている理由は不明。

スランプ
バンドは新曲を作っていますが、部分的にしかできません。ノラの提案を聞いたティースが言う「there’s the rub-a-dub-dub」は古典英語に由来する「there is the rub(そこが問題だ)」と、童謡などに出てくる「rub-a-dub-dub」というドラムの音や擦る音を表す表現をかけた言葉。また日本語で「曲作りは初めてじゃないのに」となっている台詞、英語では彼らの代表曲”Can You Picture That?”の名前を出しています。

メンバーの性格
ムーグは彼らの性格についても把握しているようです。ティースは何事も決断できず、フロイドは完璧主義者で、ジャニスは自分より他人を助けることを優先する、といった具合。はっきりした性格設定は今作が初出です。

ジョシュアツリー
ハナが提案したジョシュアツリーはカリフォルニア週の南部にあるJoshua Tree National Parkという国立公園。砂漠や岩山が広がっており、ミュージックビデオや映画の撮影にも使われています。

JJは「悪い」?
ペニーが言う「bubkis」はユダヤ系のスラングで「何もない」、無であることを意味するとか。英語ではJJはアニマルのことを「the guard dog」、番犬と呼んでいます。アニマルはノラとJJの会話から良し悪しを聞き分けています(意外と理解力がある)。アニマルはJJのことを「悪い」と言っていましたが、動物的なカンではなくノラの態度を見てそう判断しているのかもしれないですね。

オアシスじゃない
ボリビアに電話しているのは、ハナがネット予約したサイトの関係でしょうか。元ネタがあるのかどうはわからず。

マシュマロ
消費期限が1992年のマシュマロを食べてしまった皆は様子がおかしくなります(具体的な元ネタがあるかは不明)。ただし、ズートは「砂糖は脳を腐らせるから」ということで食べていません。余談で、ブライアン・ヘンソンが監督したコメディ映画『The Happytime Murders』1では、パペットにとってドラッグにあたるものが砂糖、ということになっています。マペッツでそんな設定はないですが。

リップスが見たもの
目が見開かれたので見ているこっちもびっくり。聞こえてくる曲は”Spirit in the Sky”で、宇宙には『The Muppet Show/マペット・ショー(1976年)』のPigs in Spaceに登場するThe Swinetrekが飛んでいます。「SAVE THE WORLD,LIPS」という文字が宇宙に浮かび上がります。トリップの典型のような描写です。

ジャニスが見たもの
たくさんのジャニスがいて、まずは自分を愛するように言います。これは彼女が自分より他人を優先する性格だから(双子であることも関係しているかも)で、他のメンバーもそれぞれ自分の深層心理が幻覚に現れているようです。

アニマルが見たもの
アニマルは赤ん坊の頃の自分が見えていますが、普段の本人とは違い、しっかりと喋っています。彼がノラに親近感を持っているのは子供の頃に親から捨てられた同士だからだと語ります。アニマルは元々女性を見ると追いかけ回すような(名前の通り本能に忠実な)キャラクターとして設定されていました。現在はそういう行動は見られなくなりましたが、ノラが好きなのはただ女性だから、というわけではないようです。

フロイドが見たもの
雲の中から現れたのは”Weird Al” Yankovicこと、コメディーミュージシャンのAlfred Matthew Yankovic(アル・ヤンコビック)です。彼はフロイドに「全てが完璧である必要はない」「世界がどう考えるか心配するな」と伝えます。登場・退場シーンはフロイドの台詞にあるとおり『ライオンキング』のパロディになっています。それっぽい曲もちょっと聞こえます。

ティースが見たもの
彼のシーンはストップモーションで撮られています。担当したのはStoopid Buddy Stoodios2。彼を覆う鍵盤を壊すと、大きな指輪に囲まれており、ペニーから「人生に一度は何かに本気で取り組んでみなさいよ」と怒られます。

ズートは…
ズートはマシュマロを食べていないはずなのですが、それぞれが見ている幻を「お似合いの二人だ」と言いながら写真に撮っており、写真にもその様子が写っています。彼は元から深層心理というものがなさそうではあります。また、ムーグも正気なので、たぶんマシュマロを食べていません。皆は何だかんだ開放されたことでスランプを抜け出せたようです。

登場楽曲

Master of Puppets(イントロのみ)
原曲:Metallica “Master of Puppets”(1986年)
アバンタイトルより。ヘヴィメタルの超有名曲です。タイトルとマペッツの繋がりネタでもあると思います3

Spirit in the Sky(イントロのみ)
原曲:Norman Greenbaum”Spirit in the Sky”(1969年)
リップスが見た幻覚の宇宙で流れていた曲。死後の世界とそこへ行くことへの期待を歌っています。

Gonna Get There(オリジナル)
ついにできたオリジナル曲。ドライブに例えて、困難に遭いつつも目的に向かって突き進む前向きな気持ちを歌っています。

シーズン1 第6話 Track 6: Fortunate Son/トラック6:フォーチュネイト・サン

タイトル

Creedence Clearwater Revival(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の曲 “Fortunate Son”(1969年) より。原曲では「(徴兵から逃れられる)裕福な家庭の子供」を指していますが、この話ではティースが「(親から逃れられない)裕福な家庭の子供」だと言えます。

ネタ解説&補足

ティースの両親
初登場。彼が歯科医の息子で、本名がGerald Teeth Jr.(ジェラルド Jr.)、というのも初出です。ティースは名字なんですね。歯科医である母親はTina Teeth(ティナ。演:Stephanie D’Abruzzo)、歯科助手の父親はGerald Teeth Sr.(ジェラルド。演:David Bizzaro)なお、Stephanie D’Abruzzoは現在セサミストリートでプレーリー・ドーンを担当しています。「歯科コン」は英語で「Cavity Con」、Cavity=虫歯の穴。おそらくComicCon(コミコン)のパロディです。ティナが配っているお菓子ベニエは粉砂糖をまぶした揚げドーナツで、ルイジアナ州ニューオーリンズの名物。ティースのモデルになったとされるDr.Johnもニューオーリンズを拠点にしていました4

ティースの回想(1)
個性的な眼鏡は少年時代からかけていたようです。ティース家の歯科バス「歯磨きエクスプレス」は「The Molar Express」で、絵本「The Polar Express(ポーラー・エクスプレス)」のパロディ。なので汽笛が鳴ります。Molarは奥歯(臼歯)。楽器店の名前は「The Original Jerry’s Tunes」で、フロイドを演じていたマペットパフォーマーJerry Nelsonが由来。若い頃のフロイドは眼鏡をかけており、無精髭です。バーボンストリートはニューオーリンズにある通りの名前。回想から戻ったティースは「ガンボの気分だ」「釣り(crawdadding、エビ獲り)に行こう」と言い出します。ガンボもcrawdaddingもルイジアナ州の食べ物・言葉です。

ティースの回想(2)
学位記授与式から始まります。ティースは曽祖父の「金のフロスケース」を受け取り嬉しそうにしています。ストリートミュージシャンをしているフロイドをティースは「ペッパー軍曹(Sarge)」と呼びます(フロイドの名前はThe Beatlesの”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”が由来)。この時点でティースは歯科医と音楽、どちらが自分の道か決めかねているようです。

フロイドの回想
ティースは家族と共に歯科医として働いています。フロイドとまた出会い、以前より気持ちに整理がついたのか、「今は」音楽の道を行くことに決めます。金のフロスケースを歯に装着(どうやってるんでしょうか)、歯科バスで旅立ちます。このバスをリペイントしたのが、後のエレクトリック・メイヘム・バスみたいです。ズートの回想も入りますが、たぶん彼はこの頃のエピソードには無関係です。

歯科コンでの演奏
いつかは歯科を継がなければ…という気持ちは持ち続けているため、両親が彼を訪ねてくる度に散々迷って結局断る、ということを繰り返してきたティース。皆が歯科コンに駆けつけたおかげで、両親に今の自分を見せることになります。ここで、今までティナに「そうだな」としか言ってこなかった父ジェラルドが、ティース家の目標・家訓である「皆を笑顔にする」ことを別の方法で実現できていることを認め、ティナもそれに同意します。

曲リスト
アルバム作りが再開し、曲リストが掲示されます。日本語タイトルも字幕に出ている分を書き出してみました。収録予定曲名などは実際にリリースされた本作品のサウンドトラックとはかなり異なっています。
1. Can you picture that?(想像できる?)
2. Rockin’ Robin(ロッキン・ロビン)
3. What I gotta be(俺の運命)
4. Who brought the rock?(ロックの祖)
5. Marshmallow haze(マシュマロの鞘)
6. The music made me do it(音楽の力)
7. Shack it up
8. What mamma don’t know ※一瞬なのでよく読めず
なお、その後ノラが食べているシリアルCröonchy Starsは1980年代に販売されていたもので、スウェーディッシュ・シェフのイラストも当時のものがそのまま使われています5

登場楽曲

It’s Only Rock ‘n Roll (But I Like It)(カバー)
原曲:The Rolling Stones “It’s Only Rock ‘n Roll (But I Like It)”(1974年)
アバンタイトルにて、エンストを起こした車の横で演奏。単なるロックンロール、だけど好きなんだ…とロックを称える曲。

Gotta Be(オリジナル)
フロイドがティースと出会った頃から作っていた曲。「なりたい自分になる。皆のおかげで自分が誰なのかはっきりさせて、(今は)俺たちが何者であるかどうかを彼らは知っている」という歌詞です。彼らというのはティースの家族やファンのことだと思われます。


  1. The Happytime Murders (2018) – IMDb
    邦題は『パペット大騒査線 追憶の紫影』日本国内ではU-NEXTほかで配信されています。下ネタありの過激なコメディ。主役のパペットを演じているのはドクター・ティース役でもあるBill Barettaです。 ↩︎
  2. They’re finally back! @themuppetsmayhem is streaming today on Disney+, featuring a trippy stop-motion sequence we did with Dr. Teeth! A… | Instagram ↩︎
  3. “Master of Muppets” で画像検索するとパロディが色々出てきます。 ↩︎
  4. ドクター・ティースやフロイドなどのキャラクター設定についてはこちらの記事に書いています→エレクトリック・メイヘム(Dr.Teeth and the Electric Mayhem)出演作の歴史とメンバー紹介 | Muppamiroh ↩︎
  5. Cröonchy Stars | Muppet Wiki | Fandom ↩︎
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