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The Muppets Mayhem/ザ・マペッツ・メイヘム シーズン1 第9〜10話 解説&補足

記事で扱っているエピソードまで視聴していることを前提として書かれています。※それ以降のネタバレは含みません。
過去に公開された作品(映画含む)の内容に触れている場合があります。

シーズン1 第9話 Track 9: Drift Away/トラック9:明日なきさすらい

タイトル

Dobie Gray(ドビー・グレイ)の曲”Drift Away” (1972年)より。多くのカバーバージョンがある曲です。

ネタ解説&補足

スマホ中毒
アバンタイトルではハリウッドサインが後ろに見えます。炎上騒ぎが終わってもバンドの車は行方不明のまま。英語の台詞だと、盗んだのはBeliebersの誰からしいのですが。そして前回スマホを与えられた皆はすっかり中毒になっているようです。

ソロ活動
ジャニスはInstagramでヒーリング関連の投稿が人気になっています。リップスは元々スマホを使っていましたが、第5話で見た「SAVE THE WORLD,LIPS」のメッセージどおり彼の発言が世界平和につながるものとして注目されるようになったようです(後ろのホワイトボードには地球環境や戦争に関するワードが見えます)。アニマルはハナのプロデュースでTikTok用の動画を撮影(曲はTones And Iの”Dance Monkey”)。ティースはペニーと激辛チャレンジ動画をYoutubeに投稿。フロイドは第7話で作っていたスープの歌を広告のジングルとして提供。

ラジオ出演と悲劇
JJの紹介でラジオパーソナリティのシャルルマーニュ・ザ・ゴッド(Charlamagne tha God)のラジオ番組へ出演することに。アルバムとライブについて発表するはずが、話の流れでそれぞれソロ活動に専念する=実質、解散発表になってしまいます。なお、ジャニスのフォロワーは彼女の口癖から「Forsureleans」(日本語では「タシカニーズ」)と呼称され、ちょっと宗教的なグループになっているようです。

正確には50年
ノラが「(バンドは)40年一緒に過ごしてきたのに」と言うと、ジャニスは「正確には50年よ」と返します。エレクトリック・メイヘムのデビューは1975年3月に放映されたマペットショーのパイロット版『The Muppet Show: Sex and Violence』で1、本ドラマの配信された2023年から数えると48年前です。それより少し前に結成されたのであれば50年ということになるのでしょうか。で、彼らの実年齢は…ということになりますが、マペッツ(のキャラクター)においてはあまり気にすることではありません。

念願のCEO
あのエレクトリック・メイヘムにアルバムを作らせたということで、ノラおよびワックスタウンレコードの評価が上がり、ペニーも(旅行へ行きたいのもあり)会社はノラに任せると言います。その際にノラのことを「bubala」と呼びますが、これはイディッシュ語・ユダヤ語由来の言葉で、相手を愛情を込めて呼ぶときに使われるそうです。ムッソー&フランク(The Musso and Frank Grill)はハリウッドにあるアメリカ料理の有名店。

いい時間
ノラがVHSで再生するのは、『The Muppet Show/マペット・ショー』で1977年に放映されたエピソード214(シーズン2)。ゲストのエルトン・ジョン(Elton John)がエレクトリック・メイヘムと一緒に”Goodbye Yellow Brick Road”を演奏したシーンです。この曲はオズの魔法使いに出てくるイエロー・ブリック・ロードをいわゆる出世街道や都会への道になぞらえ、そこから逃れて田舎のシンプルな生活に戻っていくことを歌っています2。アルバム制作とプロモーションに夢中になるあまり、自分たちのやり方で活動していたバンドに別の道を与え、結果的にバラバラにしてしまったことをノラは後悔しています。

登場楽曲

今回はエレクトリック・メイヘムによる演奏は無し。劇中で “Dance Monkey” “Goodbye Yellow Brick Road” が使われています。

シーズン1 第10話 Track 10: We Will Rock You/トラック10:ウィ・ウィル・ロック・ユー

タイトル

Queen(クイーン)の曲 “We Will Rock You”(1977年) より。

ネタ解説&補足

過去の回想と、それぞれのソロ活動
最終回のアバンタイトルは、1話にも登場した曲”Rock And Roll All Nite”を皆で歌っている回想から。でも今は皆それぞれの活動をしています。フロイドはCMソング(ジングル)の仕事が順調で、「Jingle Corp, Inc.(株式会社CMソング)」としてアシスタントも雇っています。ジェニー役のKristen Schaal(クリステン・シャール)は『The Muppets/ザ・マペッツ(2011年) 』でアニマルのアンガーマネジメントコーチ役として出演していました。ウッツのプレッツェルは実在するUtz Quality Foods3のお菓子。ベニガンズ(Bennigan’s)も実在のレストランチェーン4で、2008年に破産して現在は別会社に買収されています。ジャニスはフォロワーたちに囲まれていて会えないまま。気鋭のアートグラファーとして持て囃されているズートは、つれない態度です(冷たいのではなく、こだわらない性格なだけでしょう)。

ティースとペニー、リップス
酔い止めのDramamineはアメリカではメジャーな市販薬で、日本では吐き気止めの処方薬ドラマミンとして流通しています。「私の大事なミント」は英語で「Tic Tacs in the top drawer」、一番上の引き出しにあるtic tac(キャンディ菓子)5と例えています。リップスはTEDでオンライン講演を行っています。

アニマルのストレートな行動
皆はハリウッド・ボウルでのライブにはこだわっていませんし、メンバーの居場所がバラバラになっても繋がっている自覚があったのですが、家族関係にトラウマのあるノラが自分たちの行動を切欠としてどこかへ行ってしまったことは伝わります。ズートも写真をみてノラを思い出し、ジミーも探しに行こうと言います。なお、このシーンではジミーはモデルになったJim Henson(ジム・ヘンソン)に声も寄せているのがわかりやすいと思います。演じているのはズートと同じDave Goelz(デイヴ・ゲルツ)です。また、リップスはアニマルの「Gone」をノラがどこかへ「行ってしまった」のではなく「死んでしまった」と勘違いしてしまったようです。ノラを探し、また彼女の夢であるハリウッド・ボウルでのライブを実現すべく、皆はスマホとそれによって得た繋がりをノラのために使おうとします。リップスの伝手=「rolodex」は回転式の名刺ホルダー、およびそれを語源として、住所録のこと。

エレクトリック・メイヘム・バス
冒頭の回想に出てきたエレクトリック・メイヘム・バンは第8話で失われています。ただ、元々の彼らの車はバスでした(過去作品および第6話参照)。理由について特に語られてきませんでしたが、ここに来てシャックの車庫に預けっぱなしだったことが発覚。ノラを探す際はスピーカーやドラムセットをくくりつけています。

ハリウッド・ボウル
1922年からハリウッドにある野外音楽堂。第2話の記事で書いた通り、2018年にマペッツのステージショー “The Muppets Take the O2″でエレクトリック・メイヘムも出演したことがあります6が、それについて触れられていません。また、劇中のコンサート場面は合成です。客席にはティースの両親やペニー、ジャニスのフォロワーたち、そしてスタットラーとウォルドーフの姿もあります。ちなみに、エレクトリック・メイヘム以外のマペッツのキャラクターが直接登場したのはこのシーンのみです。

アルバム発売、次のツアーへ
実際には劇中と同内容のアルバムは未発売ですが、劇中のレコードジャケットを再現した限定版が出ています7。バスの中でズートが写真を見ながら「There’s us taking Manhattan(マンハッタンだ)」と言うのは、映画『The Muppets Take Manhattan/マペット めざせブロードウェイ!(1984年)』のタイトルにかけていると思われます。

登場楽曲

The Sound of Us(オリジナル)
それぞれの個性を変える必要はなく、独自の音楽を奏でることの楽しさを歌っています。

Join Together(オリジナル)
一緒に自分たちのバンドに参加することを呼びかけ、音楽および団結することへの情熱を歌っています。

Believe In Us(オリジナル)
互いを信じ合うことの重要性、皆で共に困難を乗り越えることが絆を強くする、といったメッセージが込められています。

On Our Way(オリジナル)
互いを信じ合うことの重要性、皆で共に困難を乗り越えることが絆を強くする、といったメッセージが込められています。


各話の解説はこれにて終わりです。登場楽曲プレイリストなどは別記事にまとめています。

  1. The Muppet Show: Sex and Violence | Muppet Wiki | Fandom ↩︎
  2. 素直に受け取ると…であって、色々な解釈があるので調べてみてください。 ↩︎
  3. Utz | American Snack Brand, Est. 1921 – Utz Quality Foods ↩︎
  4. Bennigan’s | American Fare • Irish Hospitality | Home Page ↩︎
  5. Tic Tac® – Refresh the moment and unleash your creativity ↩︎
  6. The Muppets Mayhem/ザ・マペッツ・メイヘム シーズン1 第1〜2話 解説&補足 | Muppamiroh ↩︎
  7. The Muppets Mayhem (soundtrack) | Muppet Wiki | Fandom ↩︎
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